キラリティを持たない(アキラルな)分子が結晶構造にキラリティを持つ結晶へと結晶化する現象を指す。キラリティとは、鏡合わせの関係にある2つの構造が異なる性質のことを指す。キラリティがあることをキラルといい、キラルな構造の代表例は人間の手の形がある。右手の形を鏡に映すと左手の形になり、これら鏡像体の形は異なるため、手の形にはキラリティがあると言える。キラルな物質には、同じ物質でも右手型と左手型に対応する異なる構造が存在する。キラルな物質の左右を表現するため“利き手”という言葉がしばしば用いられる。一方で、例えば、球を鏡に映した形は球であり、球の鏡像体同士は同じ形を示すため、球にはキラリティが無いことになる。キラリティが無いことをアキラルという。人間の手の形の他に、キラリティがある構造の例として、右巻きと左巻きが存在するらせん構造が挙げられる。キラル結晶化は、結晶化に伴い自発的にキラリティ対称性の破れが起こる現象の一つであるため、ホモキラリティ問題の観点から広く興味が持たれている現象である。また、静置された水溶液を蒸発させるなどの一般的な結晶化法によりキラル結晶化を誘起すると、結果晶出するキラル結晶の右手型と左手型は同数である一方で、溶液を攪拌しながらキラル結晶化を誘起すると、晶出する結晶のほぼ全てがどちらか片方の利き手のみになる現象が知られている。晶出する結晶の利き手に偏りを誘起する因子の探索研究が数多く行われている。
Research
Glossary
用語解説