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天野 浩教授が日本学士院会員として新たに選定されました。

 天野 浩教授(未来エレクトニクス集積研究センター長)が日本学士院の第1164回総会(令和4年12月12日開催)で、日本学士院会員として新たに選定されました。

天野 浩 教授(@名古屋大学)


 選定の対象となった、天野教授の主要な学術上の業績は次の通りです。(日本学士院のHPより転載)

主要な学術上の業績

 約60年前に赤色LED1)が誕生し、材料組成の選択により緑色LEDも生まれましたが、光の三原色の最後の1つである青色LEDは長期にわたり実現できませんでした。天野 浩氏は、赤﨑 勇氏とともに、青色LED2)の実現を目指し、赤﨑氏の指導の下、天野氏独自の工夫によって窒化ガリウム(GaN)結晶を高品質化する手法とこれをP型化3)する手法を見出し、1989年にGaN系青色LEDを初めて誕生させました。これが契機となって、青色LEDとこれを蛍光体と組み合わせた白色LEDが製品化され、表示と照明技術が一変しました。その後、GaNに加え、窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)も活用した紫外発光LEDや青色半導体レーザなどの研究開発も先導し、青色光や紫外光を用いた情報記録と読出し、化学反応の制御や殺菌などの新技術の発展にも大きく寄与してきました。また、AlGaNやGaNを用いた高速の電力制御用の素子の研究開発でも先導的役割を果たしており、エネルギー消費の削減や生活の質の向上に繋がる技術開発を通じ、持続可能社会の実現に向けて卓越した貢献をなしています。

【用語解説】
1) LED
 負の電荷(電子)が多く存在するN型半導体と正の電荷(正孔)が多く存在するP型半導体を接続した素子はダイオードと呼ばれている。このダイオードに外部 から電流を流し込むと、N型半導体とP型半導体の接合部分で、電子と正孔とが結合し、光の粒(光子)が発生する。電気エネルギーを光のエネルギーに変換するこの素子を発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)と呼ぶ。半導体の種類を適切に選択すれば、発光波長を選ぶことができる。

2) 青色LED
 青色を発光する機能を持つLED。青色LEDの実現には、金属ガリウムと窒素が化合してできたGaNと関連物質が最適であることが指摘されていたが、1989 年に天野・赤﨑両氏が成功するまで、正孔を多く含むP型GaNを形成することができず、実用に耐える青色LEDは存在しなかった。1989年に初めて誕生したP型GaNとそれ以前から存在していたN型GaNとを組み合わせたダイオード構造により、青色発光が可能となった。

3) GaN結晶の高品質化とP型化
 1985年、天野氏はサファイアを基盤として用い、通常よりも低い基板温度で平坦性に優れた窒化アルミニウム(AlN)結晶薄膜を成長し、その後に、高温でGaN結晶を成長すると、純度も平坦性の両面ですぐれた結晶が得られることが見出された。その後、マグネシウム入りのGaN結晶に低速電子ビームを照射すると、結晶内に正孔が現れ、P型化することが見出され、GaN系の物質を用いたPN接合が実現された。


*日本学士院:
 日本学士院(にっぽんがくしいん)は、学術上功績が顕著な科学者を顕彰するための機関として文部科学省に設置されており、学術の発達に寄与するために必要な事業を行う機関です。
 会員は、学術の功績が優れた科学者から選ばれ、終身任期の国家公務員特別職の身分が付与されます。(定員は150名)
 現在の会員数は、第一部(文学・史学・哲学・法律学・政治学・経済学・商学)で62人、第二部(理学・工学・農学・医学・薬学・歯学)で75人の計137人になりました。

※関連ホームページ:日本学士院
https://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2022/121201.html#007