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システム創成部門企画セッション開催報告《ICMaSS2021》

2021106

名古屋大学未来材料・システム研究所
システム創成部門企画セッション開催報告《ICMaSS2021》

 

Resilient society and system technology

 

 2021年11月6日に名古屋大学にてオンラインで開催された ICMaSS2021において、システム創成部門の企画セッションを開催した。本稿は、この開催概要をまとめたものである。

 

日時:2021年 11月6日 15:00-17:00
構成:
  各発表 15分(個々の発表に対する質疑込み):合計 1時間30分
  パネルディスカッション(各発表者、コメンテータ):30分

 

1.概要

 近年、気候変動起因すると思われる集中豪雨、台風の巨大化や、近い将来発生が予測されている地震等多くの大規模災害への対応が急務とされている。これらの大規模災害時に適切に対処可能なレジリエントな社会の構築には様々な技術が必要とされている。本セッションは、これらの大規模災害時にも対処可能なレジリエントな社会の実現に資するシステム技術について、多方面からの取り組みを俯瞰しつつ今後の研究の在り方を議論した。
 構成は、最初に歴史的な背景を含めた原子力の世界におけるレジリエンの考え方(澤田)、究極環境下におけるレジリエンスの技術的対応(ロケット技術)(笠原)等の技術的な対応についての講演 2件とともに、その後災害時にどのように対応するかに関する人々の意識(山本)、災害発生時におけるレジリエントな社会の在り方として通信技術(岡田)、マイクログリッド(加藤)に関する講演、及び最後に災害発生に被害を抑制するための事前の対応について再生可能エネルギーの立地選定を題材とした講演(林)から構成された。各講演の直後のショート Q&Aとともに、すべての講演終了後のパネルディスカッション及びコメンテータからのコメントを含めた議論が行われた。


2.個別発表

座長:未来材料・システム研究所 システム創成部門 片山新太教授
コア技術とレジリエンス

未来材料・システム研究所 システム創成部門 澤田佳代准教授
発表題目:Consideration for Resilience of Nuclear Energy System in Japan
要旨:東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、原子力業界においてもレジリエンスの観点からの安全性について見直しがなされ、原子力施設に対する新たな規制が導入された。この新規制基準では、設計基準事象を超える事象への対策が求められ、事業者にはその対応が求められた。一方で、原子力システム全体(発電-使用済燃料処分まで)を俯瞰するとレジリエンス性に欠くシステムであることがわかる。この要因について、戦後始まった原子力の短い歴史を踏まえた発表が行われた。


未来材料・システム研究所 システム創成部門 笠原次郎教授
発表題目:Sounding Rocket Systems for Transporting Payloads into Space and Its Resilience
要旨:航空宇宙システムは、本質的に脆弱性を有するシステムである。本発表では、観測ロケットでの宇宙飛行実証システムを例としてとりあげる。観測ロケット実験では、宇宙空間への打ち上げが実施された後に不具合が発生した場合に、大きな壊滅的なダメージを受けることなく、本来のミッションを達成することができるのかが問われる。重要要素の冗長設計等、堅牢なシステムのあり方を考えるとともに、他のエネルギーシステムへの応用等について発表が行われた。


災害時に強靭な社会システム

未来材料・システム研究所 システム創成部門 山本俊行教授
発表題目: Socially-integrated Technological Solutions for Real-time Response and Neighborhood Survival After Extreme Events

要旨:本研究では,シアトルと名古屋を対象として,アンケート調査等を実施し,大規模災害時の即時対応と地域生存能力の向上のために重要な要因を明らかにすることを目的としている.そのうえで,社会的・文化的要素を考慮した技術的解決策について検討することで,より適切な技術的解決策を明らかにすることを目指している.アンケート調査の結果,名古屋では大規模災害に対する不安感は高いものの災害に対する準備が不十分であり,公的支援に頼る傾向が強いことが示された.これより,災害支援物資の供給チェインの効率化方策,および,民間施設を活用した災害時入浴支援について研究を進めている.


未来材料・システム研究所 システム創成部門 岡田啓准教授
発表題目:Emergency Communication Systems during Large-Scale Disasters
要旨:大規模災害時における臨時通信システムとして,ドローンや気球を用いた無線ネットワークについて検討している.本システムではドローンや気球を用いて上空に無線ネットワークを構築することでノード間の見通しを確保することができ,被災エリアを効率良くカバーすることができる.構築した無線ネットワークにより,地上にいるユーザに対して無線 LANアクセスポイントを提供することができる.本発表では,この臨時通信システムにおける無線ネットワーク構築技術について,これまでの検討内容について紹介する.


未来材料・システム研究所 システム創成部門 加藤丈佳教授
発表題目:Emergency Power Supply using Microgrid
要旨:東日本大震災の際には、東北福祉大学に設置されたマイクログリッドが約 3日電力供給を継続した。その後、東松山スマート防災エコタウンなど、太陽光発電と蓄電池を組み合わせなどによって大震災のような長期の停電時にも電力供給が可能なマイクログリッドが構築されている。最近では、2019年の台風 15号で千葉県を中心に大規模停電が発生した際、道の駅「むつざわつどいの郷」に設置されたマイクログリッドが有効活用された。本発表では、これらの災害時に対応したマイクログリッドの実例を紹介する。さらに、同じ柱上変圧器に接続する住宅群で太陽光発電や電気自動車を共有する小規模な災害時マイクログリッドの構想について紹介する。


未来材料・システム研究所 システム創成部門 林希一郎教授
発表題目:Resilience and Renewable Energy Site Selection
要旨:地震などに加えて、近年頻発する集中豪雨や土砂災害等の各種災害に社会システムがどのように備えるのか。また自然災害に強靭な社会システムをどのように構築していくのかが、気候変動の影響が深刻化する今日においては大きな課題である。自然環境の有する災害抑制機能(例えば、洪水緩和、土壌流出抑制など)を活用したり、これらを活用した災害リスクを考慮した上での社会システムの構築が必要とされている。本報告では、再生可能エネルギー施設の立地とこの問題について、マップ化の手法を通じた最近の取り組み状況に

ついて報告が行われた。


コメンテーター
未来材料・システム研究所 システム創成部門 成瀬一郎教授
未来材料・システム研究所システム創成部門 片山正昭教授