受賞日 | 2023/12/5 |
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賞名 | 2023年度日本結晶成長学会 第1回産業功績賞 |
受賞者 | 松本 功(客員教授) |
受賞題目 | 化合物半導体の有機気相堆積装置開発と産学連携に関する功績 |
関連HP |
https://www.jacg.jp/jacg/japanese/frame_main/16/2023_JACGAWARD.html#industrial-achievement |
■ 2023年度日本結晶成長学会 第1回産業功績賞
名古屋大学 未来材料・システム研究所/東北大学 客員教授
松本 功
受賞題目「化合物半導体の有機気相堆積装置開発と産学連携に関する功績」
<授賞理由(転載)>
松本 功 客員教授は、GaAs等の化合物半導体の有機金属気相成長法(MOCVD)が産業応用され始めた1982年より、日本酸素(現大陽日酸)技術本部開発センターにてMOCVD装置開発と結晶成長プロセスの研究に取り組んできた。まず縦型装置内部流れを可視化実験で調査して高流速で境界層剥離を起こさない形状を見出し、VR2000型装置を開発した。この装置は大気圧成長でも自然対流を効果的に抑制できガスの切り替えが早い特長があり歪超格子井戸半導体レーザーやAlGaAs/GaAs HEMTの研究開発に貢献した。またGaN用に三層ノズルと薄いフローチャンネルを特長とするSR2000型装置を開発した。この装置は大きな物質輸送係数を実現して高い希釈率で十分な成長速度が得られる。この結果、気相での粒子成長を抑制して、しかも成長速度が成長圧力に依存しない特長からInGaN半導体レーザーやSi基板上のAlGaN/GaN HEMTの成長に貢献した。このようにリアクターの開発および設計理論を確立して大陽日酸の化合物半導体装置事業の礎を築いた。これは、現在のMOCVD技術における学術と産業化の基礎となっている。
特に、窒化物半導体のGaN/AlGaNについてはAlGaN成長において粒子成長が起きやすい原因を解明してその後の大型装置設計に反映させ、LED産業に大きく貢献した。また、学会・研究会等で研究成果を発表し、さらに国際学会でも招待講演に選ばれ、学術にも大きく貢献した。最近ではGaNのMOCVD装置技術をGaAs/InGaP太陽電池のエピタキシャル成長に展開して120μm/h以上の高速成長が可能であることを実証した。
さらに特筆すべき業績は、産業界からの産学連携に貢献した点である。日本学術振興会第162委員会 副委員長、電子材料シンポジウム 論文委員長の他、日本結晶成長学会 ナノエピ分科会においても幹事を務め、文科省 “省エネルギーに資する次世代半導体開発” 評価領域のPOを務めた。
