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電子材料技術の鍵となる新奇ペロブスカイト強誘電体を発見
~分子レベルの積木細工で、未踏物質の合成に成功~

Top image: Template synthesis creates multilayered perovskites with unique ferroelectric behavior (credit: Minoru Osada)

 

本研究のポイント
○ 分子レベルの積木細工により、従来合成が困難であった多層ペロブスカイト注1)の合成に成功し、新しい強誘電体注2)を発見。
○ 層数が奇数か偶数かにより、強誘電体の発現機構がスイッチするユニークな機能を発見。

【研究概要】

 名古屋大学未来材料・システム研究所の長田 実 教授、名古屋工業大学 生命・応用化学類の漆原 大典 助教、大阪公立大学大学院工学研究科の森 茂生 教授らの研究グループは、分子レベルの積木細工により、従来合成が困難とされていた多層ペロブスカイト(Cs(Bi2Srn−3)(Tin−1Nb)O3n+1; n = 4, 5)の合成に初めて成功し、これらが強誘電体であることを明らかにしました。さらに、この物質系における強誘電性の発現機構の検討を行い、層数が奇数か偶数かにより強誘電体の発現機構がスイッチするユニークな機能を有することを突き止めました。
 今回の成果は、強誘電体開発における材料探索空間を大きく拡げ、既存の材料・技術では実現困難な新材料・新機能の開拓への重要な指針を与えるものと期待されます。
 本研究成果は、2024年8月26日付米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン速報版に掲載されました。

【研究背景】

 チタン酸バリウム(BaTiO3)やチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:略称PZT)に代表されるペロブスカイト酸化物(図1a)は、優れた強誘電性に加え、高い誘電率、圧電性を示し、メモリー、キャパシター、アクチュエーター、センサーなどとして我々の電子機器等で広く利用されています。これらの強誘電体では、TiO6八面体を基本ユニットとしたペロブスカイト構造をとり、チタンと酸素の共有結合性注3)や鉛の孤立電子対注4)といった特定の元素に固有の性質により結晶構造が大きく歪み、強誘電性が発現します。現在、さらなる高機能化や環境対策のため、新しい組成・構造や鉛を含まない強誘電体の開発が進められており、様々なペロブスカイト酸化物の合成が検討されています。
 ペロブスカイト酸化物は、高い構造柔軟性を有し、様々な元素の組み合わせが可能であるため、数千種類の物質が存在するといわれています。しかしながら、強誘電性に好適な性質を持つ元素は限られているため、ペロブスカイト酸化物の膨大なライブラリーの中で強誘電体はわずか数十種類に留まっています。
 こうした問題を解決し、新しい強誘電体開発を可能とする物質系として近年注目されているのが、Dion-Jacobson(DJ)型層状ペロブスカイト注5)です。DJ型層状ペロブスカイトは、一般式 A’An−lBnO3n+1nは層数)で表され、BO6八面体からなるペロブスカイト層がn層積層した層状ペロブスカイト構造を持ちます(図1b)。
 この構造を反映し、DJ型層状ペロブスカイトでは、BaTiO3などの従来の強誘電体とは異なり、BO6八面体の回転や傾斜により強誘電性が発現するという新しいモデル(間接型強誘電性注6))が2011年に理論的に提唱されています。それ以降、新しいモデルに基づき、DJ型層状ペロブスカイトで強誘電体が多数発見されていますが、これまでに開発された物質は、ペロブスカイト層が2層の化合物に限定されていました。さらなる強誘電体開発や新しい機能発現に向け、ペロブスカイト層が4層以上の多層系の開発が期待されていますが、多層系は、合成が極めて困難であり、未踏物質とされていました。

 

【研究成果】

 本研究グループでは、DJ型層状ペロブスカイトの精密合成と強誘電体の開発を進めており、今回、積木細工の要領でペロブスカイト層を1層ずつ積み重ね、多層構造の強誘電体の合成を可能とする新しい合成法(原子層制御法)を開発しました(図2)。この原子層制御法では、ペロブスカイト層が3層の3層系を出発物質にして、単純ペロブスカイト(1層系)であるSrTiO3と反応させることで1層の層数増加が可能です。さらに、SrTiO3との反応を繰り返すことで、反応回数(n)に応じてペロブスカイト層数を1層ずつ精密に制御して積み重ね、3+nの多層構造の合成が可能となります。今回、3層系強誘電体CsBi2(Ti2Nb)O10を出発物質として、原子層制御法を適用することで、4層系、5層系の層状ペロブスカイト(Cs(Bi2Srn−3)(Tin−1Nb)O3n+1; n = 4, 5)の合成に初めて成功し、これらが強誘電体であることを明らかにしました。
 出発物質となる3層系CsBi2(Ti2Nb)O10は、典型的なセラミックス合成法である固相反応注7)により合成しました。CsBi2(Ti2Nb)O10は、(Ti,Nb)O6八面体からなるペロブスカイト層が3層積層した構造をとります。この3層系を出発物質にして、SrTiO3とモル比1:1の割合で混合し、1010 ℃で焼成することで、ペロブスカイト層が1層増加した4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13を合成しました。次いで、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13と SrTiO3とモル比1:1の割合で混合し、1080 ℃で焼成することで、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16を合成しました。
 高角散乱環状暗視野走査透過型顕微鏡(HAADF-STEM)注8)による構造解析の結果(図3)、いずれもDJ型層状ペロブスカイト特有の積層構造を有しており、3層系CsBi2(Ti2Nb)O10を出発として、1回の反応で4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13、2回の反応で5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16の合成が実現していることを確認しました。また、単位格子のサイズをみると、3層系CsBi2(Ti2Nb)O10の1.53 nmから、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13の 1.95 nm、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16 の2.34 nmと、1回の反応で (Ti,Nb)O6八面体1個分に相当する約0.4 nmずつ増加しており、ペロブスカイト層1層ずつの積木細工的な制御が実現していることが明らかになりました。
 DJ型層状ペロブスカイト多層系については、これまでも種々の方法により合成が試みられてきましたが、多層系が準安定な構造であることに加え、Csなどのアルカリの揮発による組成ズレの影響により合成が極めて困難であり、未踏物質とされていました。それに対して、今回開発した方法は極めて簡便かつ有効であり、層状ペロブスカイトを鋳型にしてペロブスカイト層数を1層ずつデジタル的に制御することで、望み通りに組成・構造を制御して4層、5層系の合成を達成しました。
 3層系CsBi2(Ti2Nb)O10、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16に対して強誘電特性(分極−電界特性)の評価を行ったところ、いずれも強誘電体特有のヒステリシス特性を示し、強誘電体であることを確認しました(図4a)。
 室温での比誘電率の層数依存性について検討したところ、3層系CsBi2(Ti2Nb)O10で50、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13で100、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16で125と、層数により特性制御が可能であることが示されました(図4b)。さらに、比誘電率の温度依存性およびラマン測定より、強誘電−常誘電相転移温度(キュリー温度TC)を評価しました。その結果、3層系CsBi2(Ti2Nb)O10で540 ℃、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13で430 ℃、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16で180 ℃と、層数によりキュリー温度が低下することを確認しました(図4b)。
 今回開発した多層系について強誘電性の発現機構の検討を行いました(図5)。放射光X線回折注9)により強誘電性と関係した構造変化を検討したところ、3層系CsBi2(Ti2Nb)O10では、Biイオンおよびその近傍の酸化物イオンが大きく変位し、強誘電性が発現していることを確認しました。これはBiイオンの孤立電子対の影響であり、従来型の変位型強誘電性モデルにより強誘電性が発現しているものと考えられます。他方、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16においては、Biイオンの変位が小さくなり、Biイオンの寄与は小さくなることを確認しました。特に、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13においては、(Ti,Nb)O6八面体の回転・傾斜と強誘電性がカップリングしており、新型の間接型強誘電性モデルの可能性が示唆されました。
 さらに、放射光X線回折、ラマン分光法注10)により、2層系CsBiNb2O7も含め、この物質系における強誘電特性と発現機構をまとめました(図6)。その結果、この系では、層数が重要な役割を果たしており、層数が奇数の場合には従来型の変位型強誘電性(直接型強誘電性)モデル、偶数の場合には新型の間接型強誘電性モデルにスイッチするユニークな機能を有することを突き止めました。
 間接型強誘電性モデルが2011年に理論的に提唱されてから、DJ型層状ペロブスカイトで強誘電体が多数発見されていますが、これまでに開発された物質は、ペロブスカイト層が2層系の化合物に限定されていました。今回開発した4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13の間接型強誘電体は、4層以上の多層系で初となります。

 

【成果の意義】

 本研究では、積木細工の要領でペロブスカイト層を1層ずつ積み重ねる原子層制御法により、4層系、5層系のDJ型層状ペロブスカイト強誘電体の開発に成功しました。今回の成果は、強誘電体開発における材料探索空間を大きく拡げ、既存の材料・技術では実現困難な新材料・新機能の開拓への重要な指針を与えるものと期待されます。特に、今回開発した原子層制御法は、DJ型層状ペロブスカイトだけでなく、様々な層状ペロブスカイトなどにも適用可能であるため、広く層状ペロブスカイトにおいて様々な元素の組み合わせを検討することにより、さらなる未踏物質の開拓や従来材料を超える強誘電体の発掘が期待されます。

 本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金・基盤研究(S)「原子膜技術による革新的蓄電デバイスの創成(代表者:長田 実)」、科学研究費補助金・挑戦的研究(萌芽)「酸化物原子膜による革新的エピタキシー技術の創成(代表者:長田 実)」、文部科学省・国際・産学連携インバースイノベーション材料創出プロジェクト(DEJI2MA)、未来材料・システム研究所共同利用・共同研究プログラム、未来材料・システム研究所萌芽的共創研究などの支援を受けて行われました。

【図面と説明】

図1.(a) 従来型ペロブスカイトと(b) DJ型層状ペロブスカイトの構造の比較。
チタン酸バリウム(BaTiO3)やチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:略称PZT)など、従来型の単純ペロブスカイトでは、TiO6八面体を基本ユニットとした単純なペロブスカイト構造をとる。他方、本研究で注目したDJ型層状ペロブスカイトでは、一般式 A’An−lBnO3n+1nは層数)で表され、A'はK+、Rb+、Cs+などのアルカリ金属イオン、AはCa2+、Sr2+、Ba2+、La3+、Bi3+などの2価もしくは3価の陽イオン、BはTi4+、Nb5+、Ta5+などの遷移金属陽イオンである。nはBO6八面体からなるペロブスカイト層の層数を意味する。ペロブスカイト層では、BO6八面体からなる層がn層積層した構造になっており、この層が強誘電性のキーユニットとなる。DJ型層状ペロブスカイトで強誘電体が多数発見されているが、ペロブスカイト層が2層、3層の化合物に限定され、4層以上の多層系は未踏物質とされていた。

 

図2.原子層制御法による多層ペロブスカイトCs(Bi2Srn−3)(Tin−1Nb)O3n+1の合成。
3層系CsBi2(Ti2Nb)O10を出発として、単純ペロブスカイトであるSrTiO3とモル比1:1の割合で混合し、1010 ℃で焼成することで、ペロブスカイト層が1層増加した4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13を合成した。次いで、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13と SrTiO3とモル比1:1の割合で混合し、1080 ℃で焼成することで、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16を合成した。

 

図3.DJ型層状ペロブスカイトCs(Bi2Srn−3)(Tin−1Nb)O3n+1のHAADF-STEM像。
(a) HAADF-STEM像と(b)コントラストの線分析。
HAADF-STEM像(a)では、白い輝点が原子カラムの位置に対応しており、3層系、4層系、5層系特有の積層構造を確認した。線分析(b)からは、原子番号に比例したコントラスト変化がみられ、元素識別が実現できている。また、単位格子のサイズをみると、3層系CsBi2(Ti2Nb)O10の1.53 nmから4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13の 1.95 nm、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16 の2.34 nmと、1回の反応で (Ti,Nb)O6八面体1個分に相当する約0.4 nmずつ増加しており、ペロブスカイト層1層ずつの積木細工的な制御が実現していることを確認した。

 

図4.DJ型層状ペロブスカイトCs(Bi2Srn−3)(Tin−1Nb)O3n+1の強誘電特性。
(a) 分極−電界特性と(b) 比誘電率の温度依存性。
分極−電界特性(a)では、いずれも強誘電体特有のヒステリシス特性を示し、強誘電体であることを確認した。比誘電率の温度依存性(b)より、強誘電−常誘電相転移温度(キュリー温度TC)を評価した。その結果、3層系CsBi2(Ti2Nb)O10で540 ℃、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13で430 ℃、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16で180 ℃と、層数によりTCが低下することを確認した。

図5.放射光X線回折による構造解析の結果。
(a)構造モデルと(b) 各イオンの変位から算出した分極量。
3層系CsBi2(Ti2Nb)O10では、Biイオンおよびその近傍の酸化物イオンが大きく変位し、強誘電性が発現している。これはBiイオンの孤立電子対の影響であり、従来型の変位型強誘電性モデルにより強誘電性が発現しているものと考えられる。他方、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13、5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16においては、Biイオンの変位が小さくなり、Biイオンの寄与は小さくなる。特に、4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13においては、(Ti,Nb)O6八面体の回転・傾斜と分極がカップリングしており、新型の間接型強誘電性モデルにより強誘電性が発現する。

 

図6.DJ型層状ペロブスカイトCs(Bi2Srn−3)(Tin−1Nb)O3n+1の強誘電特性と発現機構。
放射光X線回折、ラマン分光法により検討した強誘電性の発現機構と強誘電特性をまとめた図。キュリー温度は実験値、分極量は構造モデルから算出した計算値をプロットした。この物質系においては、層数が重要な役割を果たしており、層数が奇数の場合には従来型の変位型強誘電性(直接型強誘電性)、偶数の場合には新型の間接型強誘電性にスイッチするユニークな機能を有することが明らかになった。

 

【用語説明】

注1)ペロブスカイト:
 ロシアの科学者ペロフスキーによって発見された天然鉱物灰チタン石(CaTiO3)。一般式ABO3で表され、TiO6八面体を基本ユニットとした構造。代表的な物質にチタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:略称PZT)などがあり、強誘電体に好適な構造として知られている。
 さらに、関連化合物として、ペロブスカイト型構造が他のブロック構造と交互に積層した層状ペロブスカイトがある。層状ペロブスカイトは、層間のブロック構造により、酸化ビスマス層が内包したAurivillius型、アルカリ土類金属イオンが内包したRuddlesden-Popper型およびアルカリ金属イオンが内包したDion-Jacobson型がある。
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注2)強誘電体:
 絶縁体の一種で、外部より与える電圧の向きに応じて電気分極 のプラス、マイナスが反転し、しかも電圧がゼロとなっても分極が保たれる性質を持つ物質。強誘電性を利用したメモリは、高速書き換えが可能、電源を切っても記憶内容が消えない、消費電力が少ないなどの優れた特徴があり、電車のICカードなどで広く使用されている。
 また、強誘電体は、押したり引っ張ったりして結晶を変形させることで電場が発生し、逆に電場をかけることによって結晶が変形したりする圧電性を併せ持つ。この圧電性は、インクジェットプリンタのヘッド、3Dプリンタのマイクロデバイス、各種アクチュエーター、振動発電床などとして広く用いられている。
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注3)共有結合性:
 原子と原子が電子を一つずつ分け合うことにより形成した強い結合。(↑ 本文に戻る)

注4)孤立電子対:
 原子の最外殻の電子対のうち、結合に関与していない電子対。特に、ペロブスカイト構造中の鉛イオンPb2+、ビスマスイオンBi3+は、6s2孤立電子対が立体障害として働き、歪んだ構造(強誘電相)を安定化する傾向がある。(↑ 本文に戻る)

注5)Dion-Jacobson(DJ)型層状ペロブスカイト:
 一般式A’An−lBnO3n+1で表される層状ペロブスカイトの一種。ここで、A'はK+、Rb+、Cs+などのアルカリ金属イオン、AはCa2+、Sr2+、Ba2+、La3+、Bi3+などの2価もしくは3価の陽イオン、BはTi4+、Nb5+、Ta5+などの遷移金属陽イオンである。nはBO6八面体からなるペロブスカイト層の層数を意味する。Dion-Jacobson相は、強誘電性、イオン伝導性などの多彩な物性を示し、幅広い応用が期待されている。(↑ 本文に戻る)

注6)間接型強誘電性:
 酸素八面体の回転・傾斜に起因して結晶構造の反転対称性が破れ、副次的な金属イオンの変位により強誘電性が発現する機構。イオン変位により直接的に強誘電性が発現する従来モデル(直接型モデル)に対して、副次的に強誘電性が発現するため、間接型強誘電性と呼ばれる。(↑ 本文に戻る)

注7)固相反応:
 固体内、固体間で起こる化学反応。本研究で対象とするペロブスカイトでは、1000~1500 ℃で原料を焼成することで、原子が固体内を拡散することで反応が進行し、目的物質を合成できる。(↑ 本文に戻る)

注8)高角散乱環状暗視野走査透過型顕微鏡(HAADF-STEM):
 細く絞った電子線を試料上で走査し、透過電子のうち高角散乱したものを円環状検出器で検出するTEM観察法。原子番号に比例したコントラストが得られる特徴があり、重元素の観察、元素識別に適する。(↑ 本文に戻る)

注9)放射光X線回折:
 物質の構造を調べる方法。放射光X線を試料に照射し、回折強度を調べることで結晶構造(原子の並び方や原子間の距離)を決定する。(↑ 本文に戻る)

注10)ラマン分光法:
 物質の構造を調べる方法。レーザー光などの単色光を試料に入射し、その散乱光の振動数を調べることで、化学結合、局所構造、欠陥などの情報を得ることができる。(↑ 本文に戻る)

【論文情報】

論文誌 :Journal of the American Chemical Society
タイトル:Atomic Layer Engineering of Ferroelectricity in Dion-Jacobson Perovskites
著 者 :森田 秀(名古屋大学大学院工学研究科応用物質化学専攻・博士課程3年), 漆原 大典(名古屋工業大学生命・応用化学類・助教), 西橋 慧太(名古屋大学大学院工学研究科応用物質化学専攻・博士課程1年), 小林 亮(名古屋大学未来材料・システム研究所・准教授), 山本 瑛祐(名古屋大学未来材料・システム研究所・助教), 浅香 透(名古屋工業大学生命・応用化学類・准教授), 中島 宏(大阪公立大学大学院工学研究科・特任准教授), 森 茂生(大阪公立大学大学院工学研究科・教授), 長田 実(名古屋大学未来材料・システム研究所・教授)責任著者
DOI: 10.1021/jacs.4c09214
URL:https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/jacs.4c09214

 



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【研究者連絡先】

未来材料・システム研究所
長田研究室 URL:https://mosada-lab-nagoya.com
教授 長田 実(おさだ みのる)
E-mail: mosada[at]imass.nagoya-u.ac.jp